産業用のレーザー加工で主流となっているのは、CO2・YAG・ファイバー・UVの4種類です。同じ「レーザー加工」でも、この4種類は光の波長がそれぞれ異なり、得意な素材も、向いている加工方法も変わります。レーザー加工の種類を知らないまま発注すると、金属を切りたいのに樹脂向きの装置を探していた、といったすれ違いが起こりかねません。本記事では、レーザー加工の種類を波長・素材・加工方法の3つの切り口で一覧に整理します。板金加工の現場で実際にレーザーを使い分けている立場から、選び方の道筋までまとめました。

結論|レーザー加工の種類は「波長」で4つに分かれる

はじめに要点をお伝えします。レーザー加工の種類を分ける最大の軸は、レーザー光の波長(光の波の長さ。単位はμm=1/1000mm)です。波長が違うと、素材に光が吸収されるかどうかが変わり、切れる素材・切れない素材が分かれます。

大まかには、CO2レーザーは波長が長く樹脂や木材などの非金属に吸収されやすい一方、YAGレーザーとファイバーレーザーは波長が短く金属に吸収されやすい性質を持ちます。UVレーザーはさらに波長が短く、熱の影響を抑えた微細加工に使われます。

つまり「どのレーザーが優れているか」ではなく、「加工したい素材と目的にどの波長が合うか」で選ぶのが基本です。以下では4種類それぞれの特徴と、素材別・加工方法別の使い分けを順に見ていきます。

4種類のレーザーの波長を数直線上に並べ、それぞれの得意な素材を示した図
波長が変わると、吸収されやすい素材が変わる

種類を分けているのは「波長」

レーザーの種類を理解する鍵は波長です。素材には、吸収しやすい波長と、反射してしまう波長があります。吸収されなければエネルギーは熱に変わらず、加工が進みません。

例えば、アクリルや木材は波長10.6μmのCO2レーザーをよく吸収します。逆に、鉄やステンレスなどの金属は、波長1μm前後のYAGレーザーやファイバーレーザーの方が吸収率が高くなります。この吸収の違いこそが、種類ごとの守備範囲を決めているわけです。

なお、レーザー加工そのものの原理(発振器で作った光を集光し、熱で素材を溶かす・蒸発させる非接触の加工)については、CO2レーザーとYAGレーザーの違いで詳しく解説しています。本記事は種類の一覧と使い分けに絞ってまとめます。

レーザー加工の種類【4種類の一覧比較表】

主流の4種類を、波長・媒質・得意素材・主な用途の観点で一覧にまとめます。細かな特徴は表のあとで種類別に解説します。

種類 波長 発振媒質 得意な素材 主な用途
CO2レーザー 約10.6μm 炭酸ガス 樹脂・木材・紙・布・ガラス/鉄系金属も条件次第 切断・彫刻・マーキング
YAGレーザー 約1.06μm YAG結晶(固体) ステンレス・鉄・アルミ等の金属 切断・溶接・微細加工
ファイバーレーザー 約1.07μm 光ファイバー(固体) 金属全般(銅・真鍮など高反射材も) 切断・溶接・マーキング
UVレーザー 約0.355μm 固体レーザーの波長変換 樹脂・ガラス・薄膜・電子部品 微細加工・マーキング

表のとおり、金属加工の主役はYAGレーザーとファイバーレーザーです。CO2レーザーは非金属に強い一方、板金の現場では鉄系材料の切断にも用いられます。UVレーザーは熱の影響を極力避けたい微細加工の領域を担います。

ステンレス・鉄・アルミ・銅・樹脂・木材について、CO2/YAG/ファイバー/UVの適性を示した比較表
素材から逆算すると、選ぶべき種類が絞り込める

4種類それぞれの特徴と使いどころ

一覧表の各行を、順に補足します。それぞれの原理や詳しい比較は、種類ごとの解説記事にまとめています。

CO2レーザー|非金属に強い長波長タイプ

炭酸ガスを発振媒質とする波長10.6μmのレーザーです。波長が長いため、樹脂・木材・紙・布・ガラスといった非金属によく吸収されます。アクリルの切断では、切断面が溶けて透明に仕上がるのが特徴です。大出力化しやすく、大型の板材を扱う装置に向きます。

金属に対しては波長1μm帯ほど吸収率が高くありませんが、酸素をアシストガスとして吹き付け、酸化反応の熱を利用することで、鉄系材料の切断は実用的に行えます。この点は誤解が多いところで、詳しくはCO2レーザーで金属は切れるのかをご覧ください。

YAGレーザー|薄板の精密加工に強い固体レーザー

YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)という人工結晶を発振媒質とする固体レーザーで、波長は約1.06μmです。短い波長は金属に吸収されやすく、ステンレスやアルミの加工に適します。光ファイバーで光を導けるため加工ヘッドの取り回しが利き、パルス発振(光を短く区切って出す方式)との相性もよいことから、熱の影響を抑えた繊細な加工に向きます。

厚板の高速切断は不得手な面があり、薄板の精密切断や微細な穴あけで力を発揮します。原理と板金での使いどころはYAGレーザーとはで詳しく扱っています。

ファイバーレーザー|高効率な現行世代の主力

希土類元素を添加した光ファイバー自体を発振媒質とする固体レーザーで、波長は約1.07μmです。電気から光への変換効率が高く、ビーム品質にも優れるため、薄板の高速切断に強みがあります。銅や真鍮といった光を反射しやすい素材にも比較的対応しやすい点が、CO2レーザーとの大きな違いです。

近年の板金業界では、薄板切断の主力がCO2からファイバーへ移ってきました。ただし厚板では切断面の質感が異なるなど、単純な優劣では語れません。両者の関係はファイバーレーザーとはで整理しています。

UVレーザー|熱を抑える紫外線レーザー

波長約0.355μmの紫外線領域のレーザーです。素材を溶かすのではなく、分子の結合を切って除去する働き(アブレーション)が強く出ます。熱の影響が小さいため、熱に弱い樹脂やフィルム、電子部品の加工に適し、集光径を小さくしやすいことから微細な文字や細線も加工できます。

一方で装置は高価で、大出力化や厚板の切断には向きません。CO2との比較はUVレーザーとCO2レーザーの違いで詳しく解説しています。

加工方法から見たレーザーの種類

ここまでは装置の種類で分けてきましたが、レーザー加工は「何をするか」でも分類できます。同じ装置名でも加工方法が違えば話が噛み合わないため、代表的な加工方法と、それぞれに使われるレーザーの対応関係を整理しておきます。

加工方法 主に使われるレーザー 板金での位置づけ
切断 ファイバー・CO2・YAG 板金加工の中心。金型不要で1個から対応できる
溶接 YAG・ファイバー 熱の集中により、TIGより歪みを抑えやすい
マーキング・彫刻 ファイバー・YAG(金属)/CO2・UV(非金属) ロット番号や識別表示。素材で種類が変わる
穴あけ YAG・ファイバー 小径・多数穴に有利。板厚との関係で下限がある

レーザー切断

レーザーで素材を溶かし、アシストガスで溶けた金属を吹き飛ばして切り離す加工です。板金でもっとも使われる方法で、金型が不要なため、1個からの試作にも対応できます。仕上がりを左右する条件についてはレーザー切断の品質を決める3要素で解説しています。

レーザー溶接

レーザーの熱で母材を溶かして接合する方法です。エネルギーを狭い範囲に集中できるため、TIG溶接に比べて熱による歪みを抑えやすい特徴があります。ステンレス箱物の溶接など、外観と精度が問われる部品で選ばれます。詳細はステンレスのレーザー溶接をご覧ください。

レーザーマーキング・彫刻

素材の表面を薄く変質・除去して、文字や記号、二次元コードを表示する加工です。インクを使わないため消えにくく、トレーサビリティの用途で広く使われています。金属にはファイバー・YAG、樹脂や木材にはCO2と、素材で適した種類が変わります。CO2とYAGの波長ごとの違いはCO2レーザーとYAGレーザーの違いで詳しく解説しています。

レーザー穴あけ

ドリルでは難しい小径の穴や、多数の穴を効率よくあける加工です。板厚と穴径の関係に制約があり、一般には穴径が板厚と同程度以上が目安になります。工法の使い分けはステンレスの穴あけ加工、φ0.1mm級の微細穴はステンレス微細穴・精密プレート加工にまとめています。

切断の後工程|曲げ・溶接

レーザーは切断・溶接・マーキングを担いますが、板金部品の形を決めるのは曲げの工程です。レーザーで切り出した平板を、プレスブレーキで立体形状に仕上げます。曲げの基礎は板金の曲げ加工とはをご覧ください。

素材から選ぶレーザーの種類【早見表】

「この素材はどのレーザーか」という視点で、代表的な素材と適したレーザーの組み合わせを整理します。実際には板厚や要求品質でも変わるため、目安としてご覧ください。

素材 CO2 YAG ファイバー UV
ステンレス(SUS304等) ◯(酸素併用で中厚板) ◎(薄板・精密) ◎(薄板高速)
鉄(SPCC・SS400) ◎(厚板)
アルミ(A5052等) △(反射しやすい)
銅・真鍮 ×(高反射)
アクリル・樹脂 × × ◎(熱に弱い樹脂)
木材・紙・布 × ×

ステンレスやアルミの材質選定そのものに迷う場合は、ステンレスの種類と選び方アルミ板金加工の基礎もあわせてご確認ください。素材が決まればレーザーの選択肢も自ずと絞り込めます。

レーザー加工の種類を選ぶ3ステップ

実務では、次の順に考えると迷いにくくなります。装置の名前から入るのではなく、加工したいものから逆算するのが要点です。

  • 第1ステップ:素材を決める(金属か非金属か、金属なら鋼種)
  • 第2ステップ:加工方法を決める(切断・溶接・マーキング・穴あけ)
  • 第3ステップ:板厚・精度・数量から装置と条件を詰める

現場でよくあるのは、第3ステップの板厚が決め手になるケースです。同じステンレスでも、板厚0.1mmの薄板とt6.0の厚板では、適した装置も条件もまったく変わります。図面が固まっていない段階でも、素材と板厚、必要な精度をお伝えいただければ、加工方法を含めてご提案できます。

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当社のレーザー加工設備と対応範囲

当社では、CO2レーザー加工機とYAGレーザー加工機の2種類を保有し、板厚と形状に応じて使い分けています。CO2レーザー加工機は日平トヤマ製(TLV-408E40F)で、4尺×8尺(1,219mm×2,438mm)の大型板材まで対応します。YAGレーザー加工機は1,000mm×1,000mmの範囲で、薄板の精密な切断や微細穴加工を担当します。

加えて、レーザー溶接機(アマダ YLM-500P)とTIG溶接機、プレスブレーキによる曲げまで社内で一貫して行えます。そのため、切断だけを外注してから曲げ先を探す、といった手間がかかりません。埼玉県川口市を拠点に、近隣から遠方まで幅広くご依頼をいただいています。地域からお探しの方は埼玉でレーザーカット・板金加工を依頼するならもご参照ください。

実際の加工例としては、SUS304薄板プレートのレーザー切断ハステロイ厚板のレーザー切断薄板ステンレスのYAGレーザー加工切断・曲げ・溶接を一貫したステンレスダクトなどがあります。設備の詳細は設備紹介ページでご確認いただけます。

まとめ|種類を知れば発注はスムーズになる

レーザー加工の主流は、CO2・YAG・ファイバー・UVの4種類です。違いを生むのは波長であり、波長が変われば得意な素材も加工方法も変わります。金属の板金加工ならYAG・ファイバーが中心、非金属や厚板の鉄系ならCO2、微細で熱を避けたい加工ならUV、という大枠を押さえておけば、装置選びで迷うことは少なくなります。

とはいえ、実際の判断には板厚や要求精度、数量が絡みます。「どの種類が適しているか分からない」という段階でも構いません。素材と用途をお聞かせいただければ、加工方法から具体的にご提案します。まずはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。