板金の曲げ加工では、指示どおりに曲げたつもりでも角度が数度戻る、フランジが短くて曲げられない、といった問題が起こります。原因の多くは、加工の腕前ではなく、材質と板厚に対する型と寸法の関係にあります。曲げ加工の仕組みを知っておくと、図面の段階で防げる手戻りが少なくありません。本記事では、板金の曲げ加工の基本であるV曲げの考え方から、スプリングバックの理由と対策、最小曲げ半径やフランジ高さの目安までを、板金加工の現場目線で整理します。

結論|曲げの仕上がりは「材質・板厚・型」の組み合わせで決まる

最初に要点をお伝えします。板金の曲げ加工の出来は、材質、板厚、そして使う金型(パンチとダイ)の組み合わせでほぼ決まります。同じ図面でも、SUS304とSPCCでは戻り方が違い、板厚が変われば必要なダイ幅も変わります。

そして、曲げは切断の後工程です。展開図の寸法が適切でなければ、いくら丁寧に曲げても仕上がり寸法は合いません。曲げを前提とした展開寸法の設計こそが、精度を左右する出発点になります。切断側の条件についてはレーザー切断の品質を決める3要素で解説しています。

パンチとダイで板を曲げる断面図。ダイ幅V・板厚t・曲げ内Rの関係を示す
ダイ幅・板厚・内Rは互いに関係する

板金の曲げ加工とは

板金の曲げ加工は、平らな板材に力を加えて折り曲げ、立体的な形状を作る加工です。切断した平板を箱状やL字状に成形する工程で、板金部品の形を決める要といえます。

プレスブレーキの仕組み

もっとも一般的なのが、プレスブレーキという機械を使う方法です。上側のパンチ(押し込む型)と下側のダイ(受ける型)で板材を挟み、V字の溝に押し込んで曲げます。押し込む深さで角度を調整するため、深く入れれば鋭角に、浅ければ鈍角になります。

曲げの内側は圧縮され、外側は引き伸ばされます。この伸び縮みがあるため、曲げた後の寸法は元の板の長さと一致しません。この差を見込んで展開寸法を決めることが、板金設計の基本になります。

曲げに必要な力

曲げに要する力は、板厚と材質、そしてダイ幅で決まります。板厚が厚いほど、また引張強さが高い材質ほど大きな力が必要です。ステンレスは軟鋼より必要な力が大きく、同じ機械でも曲げられる長さが短くなる場合があります。機械の能力はトン数で表され、曲げ長さとの兼ね合いで対応範囲が決まります。

曲げ加工の種類【方式別の比較表】

V曲げには、押し込み方の違いによって3つの方式があります。求める精度とコストのバランスで使い分けます。

方式 押し込み量 角度精度 必要な力 特徴
パーシャルベンド(部分曲げ) 浅い 標準 小さい もっとも一般的。1組の型で多様な角度に対応できる
ボトミング(底突き) ダイ底まで 高い 中程度 角度が安定しやすく、戻りが小さい
コイニング(圧印曲げ) 強く押し込む 非常に高い 大きい 板厚方向まで塑性変形させる。高精度だが機械への負荷が大きい

実務でもっとも多いのはパーシャルベンドです。1組の型で角度を変えられるため段取りが早く、多品種少量の板金加工と相性がよい方式といえます。厳しい角度公差が求められる場面では、ボトミングやコイニングを検討します。

形状による分類

できあがる形からは、次のように呼び分けられます。図面の意図を伝える際にも役立つ言葉です。

  • L曲げ:1回の曲げでL字にする、もっとも基本の形状
  • Z曲げ(段曲げ):段差をつける曲げ。段の高さが小さいと専用型が必要になることがある
  • ハット曲げ:帽子の断面のような形。2回以上の曲げで成形する
  • R曲げ:大きな半径で緩やかに曲げる。多数回の小刻みな曲げで近似することもある
  • ヘミング(つぶし):端部を折り返して重ねる。切断面の露出を防ぎ、剛性も高まる
L曲げ・Z曲げ・ハット曲げ・R曲げの断面形状を並べた比較図
形状によって金型と曲げ順序の制約が変わる

スプリングバックとは|曲げが戻る理由と対策

曲げ加工でもっとも多い相談が、スプリングバックです。加工そのものは正しくても、狙いどおりの角度に収まらない現象を指します。

起きる理由

金属を曲げると、力が加わった部分には塑性変形(元に戻らない変形)と弾性変形(元に戻ろうとする変形)が同時に生じます。押し込む力を抜くと、弾性変形の分だけ板が戻ります。これがスプリングバックです。

戻り量は材質の性質に左右されます。一般に、引張強さが高い材質ほど、また板厚に対して曲げ半径が大きいほど、戻りは大きくなります。

材質による傾向

材質 スプリングバックの傾向 曲げ加工上の留意点
SPCC(冷間圧延鋼板) 小さい 曲げやすく、角度も安定しやすい
SUS304 大きい 戻りを見込んだ角度設定が要る。加工硬化しやすい
SUS430 中程度 SUS304よりは戻りが小さい傾向
A5052(アルミ) 中〜大 割れを避けるため曲げ半径を大きめに取る

ステンレスの曲げで戻りが大きいのは、材質そのものの性質によるものです。材質ごとの違いはステンレスの種類と選び方、アルミの特性はアルミ板金加工の基礎で解説しています。

現場での対策

対策の基本は、戻る分を見込んで余分に曲げる(オーバーベンド)ことです。加えて、ボトミングやコイニングのように押し込みを強める方式に変える、ダイ幅を適正化する、といった手立てがあります。

ただし、戻り量は同じ材質でもロットや圧延方向で変わることがあります。そのため、公差の厳しい部品では、初品で実際に曲げて角度を測り、条件を追い込む進め方が確実です。量産の前に試し曲げを行う理由はここにあります。

曲げ加工の寸法の考え方

図面の段階で押さえておくと手戻りが減る、代表的な寸法の目安を整理します。数値は一般的な目安であり、実際は保有する金型で変わります。

最小曲げ半径

曲げの内側の半径が小さすぎると、外側が伸びきって割れが生じます。目安として、軟鋼では板厚と同程度以上、ステンレスやアルミではそれより大きめの半径を取ると安全です。とくにアルミは曲げに対して割れやすいため、余裕を持たせます。

また、圧延方向に対して直角に曲げる方が割れにくいという性質もあります。細長い部品で曲げ線の向きが決まっている場合は、材取りの段階で配慮します。

ダイ幅と曲げ内R

V曲げでは、下型のV溝の幅(ダイ幅)が仕上がりの内Rを決めます。一般的な目安として、ダイ幅は板厚の6〜8倍程度が使われ、曲げの内側半径はダイ幅のおよそ6分の1前後になります。図面で内Rを厳密に指定する場合は、対応できる型があるかを事前にご相談いただくと確実です。

最小フランジ高さ

曲げた立ち上がり部分(フランジ)が短すぎると、ダイのV溝に載りきらず曲げられません。目安は、ダイ幅の半分に板厚を加えた程度です。板厚1.5mmでダイ幅12mmなら、おおむね7〜8mm程度が下限になります。

展開寸法と伸び

曲げると板は伸びるため、展開図の長さは仕上がり寸法の合計より短くなります。この差を伸び代(または曲げ係数)と呼び、材質・板厚・内Rから求めます。展開寸法の算出は板金の要であり、ここがずれると全体の寸法が合いません。

穴と曲げ線の距離

曲げ線の近くに穴があると、曲げの力で穴が変形します。目安として、曲げ線から穴の縁まで板厚の3倍程度以上を確保すると安全です。近接せざるを得ない場合は、曲げの後に穴をあける順序も検討します。穴あけについてはステンレスの穴あけ加工で詳しく扱っています。

設計段階で押さえたい5つのポイント

ここまでの内容を、図面を描く際のチェック項目としてまとめます。

  • フランジ高さが確保されているか(ダイ幅の半分+板厚が目安)
  • 曲げ線と穴・切り欠きの距離が近すぎないか(板厚の3倍程度以上)
  • 内Rの指定が、現実的な型で実現できる値か
  • 曲げ順序が成立するか(後の曲げで工具が干渉しないか)
  • 角度公差が厳しい箇所は、本当に必要な精度か

とくに見落とされやすいのが曲げ順序です。箱形状のように4辺を立ち上げる部品では、最後の1辺を曲げるときにすでに立った面が機械と干渉することがあります。設計の早い段階で加工側と擦り合わせておくと、形状変更の手戻りを避けられます。コストへの影響は板金加工のコストダウンでも解説しています。

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当社の曲げ加工設備と一貫対応

当社では、小松製作所製のプレスブレーキ(80トン/最大2,000mm)とサーボプレスブレーキ(50トン/最大1,250mm)を保有し、部品の大きさと要求精度に応じて使い分けています。サーボ式は動作の制御が細かく、薄板や精度が求められる部品に適します。

曲げの前工程では、日平トヤマ製CO2レーザー加工機(TLV-408E40F/4尺×8尺)とYAGレーザー加工機(1,000mm×1,000mm)で切断を行い、曲げの後はレーザー溶接機(アマダ YLM-500P)やTIG溶接機で組み立てまで対応します。切断・曲げ・溶接を社内で一貫して行えるため、工程間の受け渡しによる寸法のばらつきや納期の遅れを抑えられます。

実際の製作例としては、切断・曲げ・溶接を一貫したステンレスダクトSUS薄板製缶溶接による箱形状部品歪みを抑えたSUSシューターの製作などがあります。設備の詳細は設備紹介ページをご覧ください。

まとめ|曲げは図面の段階で決まる

板金の曲げ加工は、材質・板厚・金型の組み合わせで仕上がりが決まります。スプリングバックは材質の性質から必ず生じるものであり、見込み角度や押し込み方式で対応します。そして、フランジ高さや穴との距離、曲げ順序といった条件は、図面の段階で確認しておけば手戻りを避けられます。

「この形状は曲げられるだろうか」「内Rの指定はこれで妥当か」という段階でのご相談も承っています。図面をお送りいただければ、加工の可否と、必要に応じた形状のご提案をお返しします。まずはお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。